米国発株価動揺
- 健司 藤井

- 2018年2月10日
- 読了時間: 3分
【今】本ウェブサイトのひとつの目的は、リスクマネジャーの見方を伝えることである。その目的からして、避けては通れない事象が起きている。
先週来、金利・株価が動揺している。きっかけは米国の利上げに関する憶測だろう。 米国の利上げペースが早まり、上げ幅も大きくなるのではないか、との見方が市場に広まり、長きにわたった金融緩和の巻き戻しが、いよいよ本格化して経済に悪影響を与える、との懸念が広まった。 今週の米国ダウ平均株価は、1,000ドル超の下げ幅を2回記録することになった(ただし、米株価は伸長しているので、「下げ幅」で議論することは、若干危険であることには注意する必要がある)。 日本でも株価が乱高下し、マスコミは景気懸念を吹聴している。
市場は、これが一時的な調整なのか、本格的な反転の始まりなのか(「correction」か、「reversal」か)を議論している。現状の多数派は、一時的な調整、特に昨年末以降の上げが急だったことに対する調整の範囲内だという見方だと思う。その背景には、主要国経済がしっかりしていることがある。昨年の今頃、多くのリスクマネジャーは、中国の景気失速や米国経済の腰折れを、リスクシナリオとして持っていた。その後1年を経て、そうした懸念は、少なくとも現時点までは杞憂だった、というのがコンセンサスである。
ここで今回の株価動揺が調整なのか反転なのかを議論するつもりにはないが、リスクマネジャーが今やらなければいけないことがある。それは、この市場の動きから、副次的にリスクが溜まっているところはないか、それが弾けそうになっていないか、もし弾けたら市場はそれをどのように受け止めるか、について思いを巡らせることである。
2007年のサブプライムローンと証券化商品市場崩壊の引き金となったのが、BNPパリバ傘下のヘッジファンドが償還停止を表明したことだったことを覚えているだろうか。市場は、正面に見えて、心構えができている出来事よりも、予期せぬ出来事に対してよりショックを受ける。ときにそれは狼狽につながる。 サブプライム証券化商品とBNPパリバのヘッジファンドには、関連はあった(同ヘッジファンドは証券化商品に投資していた)。が、その関連が直接には見えなかったことから、市場は大きなショックを受けた。その後、証券化商品の価格は崩落し、決して戻ることがなかった。
リスクマネジャーの本質は、シナリオビルディング(scenario-building = シナリオを考えること。シナリオで出来たビルではないです)だ。株価・金利・為替等の乱高下が、誰にメリットを与えて、誰に不利益を与えるか。その不利益のマグマは噴火するのか?噴火したときの影響は?その影響に市場はどう反応するだろうか?市場はそれに耐えられるだろうか?市場と、市場プレーヤーのメカニズム(あるいは「バリューチェーン」)に対する知識を結集してシナリオを考えるべきだ。
繰り返しになるが、今回の株価下落がマグマの噴火に至るとは言っていない。リスクマネジャーが持つべき「健全な懐疑心」と、今なすべきことについての示唆である。
~BNPパリバとサブプライム証券化商品については、【増補版10大事件】の【第10章「サブプライムローン問題と証券化商品」】を参照されたい。 ~「健全な懐疑心」については、【増補版10大事件】の【第2章】「ブラックマンデー」の「目撃者のコラム」を参照されたい。
























コメント