「ビットコイン・プロジェクトチーム」~10大事件としての仮想通貨
- 健司 藤井
- 2018年4月8日
- 読了時間: 3分
1月のコインチェック詐取事件以降、仮想通貨問題が新聞紙面に載らない日はないと言っても言い過ぎではない。議論の混乱が興味深かったこともあり、リスクマネジャーの立場から、「10大事件としての仮想通貨」を考えてみた。
4年前、自身が主宰する「東京リスクマネジャー懇談会(TRMA)」のセミナーで「ビットコインの概要とその法的位置づけ」を扱った。当時はビットコインが新たな決済手段として希望を集めていたタイミングだった。 講演を聞いて最初に思った感想は、「これはプロジェクトチーム組成だな」、というものだった。ビットコインを普及させるためのプロジェクトチームでは決してない。
金融機関のリスクマネジャーを長年やっていると、純粋に前向きなリスク管理の開発や展開だけでなく、ダウンサイドやさらにはダークサイドのリスク管理に対する考慮も必要になる。主にオペレーショナルリスク領域になるが、金融機関のネットワークへのアクセスを試みる不正行為等、金融機関をターゲットとした不正行為の試みは後を絶たない。 「これはプロジェクトチーム組成だな」という感想は、「もし自分が「塀の向こう側の人」だったら、ビットコインをネタにした、プロジェクトチームを組成して過去金融不正で培ったあらゆるノウハウを結集するだろうなぁ」、というものである。 なにしろ、仮想通貨には法律がない(2017年に改正資金決済法に従うことになるが当時はまだその対象ではなかった)、よって規制がない、業界団体もない、ルールもない、市場慣習はどんどん変わる、という状況である。正に「ないないづくし」、「何でもあり」だったのである。そこでは、過去金融不正事件で発生した様々な「テクニック」が法規制に「反する」ことなく適用できる、というのが直感だった。例を挙げよう。・「M資金」~今度新しい仮想通貨ができるんです。最初に参加する人は後で入ってくる人よりも有利な条件でマイニングできるんですが、その創業者にコネがあるので、多少の出資をいただければ、後の方よりも有利な条件で新ビットコインを受け取れるんです。こんないい話は今を逃したらないですよ。 ・「おれおれ」~「事故にあってすぐに金がいるんだけど、銀行閉まってるから、俺のパソコン立ち上げて、保管してるビットコインを被害者の人の口座に送金してくれない? ・「なりすまし」・「乗っ取り」~ビットコインを保管している個人のPCを乗っ取ることでビットコインを不正送金。 ・「風説の流布」~ツィッターやクチコミで「あのXX取引所、やばいんでない?」、と持ち上げたうえで、取引所が扱う仮想通貨の価格を暴落させ、底値で購入。 ・「フロントランニング」~取引所自身が、自己勘定で、特定の仮想通貨に売り注文を浴びせ、価格を下げたところで買い。 ・「鉄砲」~特定の取引所、特定の仮想通貨に巨額の売り注文を発注、価格を下げ、下がった価格で買いを入れたところで、売り注文をキャンセル。 等々、アイデアはいくらでも出てくる。「塀の向こう側の」エキスパートであれば、それをすぐに「プロジェクトチーム」化しただろう。 このセミナーを開催した3週間後に、「マウントゴックス」事件が発生したのは、決して偶然ではない。「マウントゴックス」、「コインチェック」だけでなく、その後「事件」は数限りなく発生しているが、すべては上記プロジェクトチームなら 当然に企画された個別プロジェクト案件である。(が、その想像を越えた事件もまた発生している。) 次回以降では、いくつかの切り口から「10大事件としての仮想通貨」を考えてみたい。
【TRMAセミナー「ビットコインの概要とその法的位置づけ」については、TRMAのホームページ(www.trma.jp)を参照されたい】
なお、写真は、2018年2月にパリで新たに開業した(らしい)ビットコイン取引所。下町を歩いていて、たまたま遭遇した

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