「有限か無限か」~10大事件としての仮想通貨③
- 健司 藤井
- 2018年7月8日
- 読了時間: 3分

ビットコインのメリットとして繰り返し主張されるのが、ビットコインは総量が限定されている、という点である。 ビットコインは、数式モデルに基づいて総量が2,100万ビットコインになるように成立しており、その「発行上限」に向けて、4年ごとに半減していく仕組みになっている。2,100万ビットコインを超えて発行(採掘(マイニング))されることはなく、通常の通貨のように無制限に発行されることはない。従って、ビットコインは、中央銀行のような存在がなくても自己規律が働く。これが交換業者を中心とした関係者の主張である。
この主張自体には誤りはない。ビットコインの「発行総量」は、発行上限である2,100万ビットコインに対して現時点ですでに80%を超えており、2024年には93.75%に達することになる。先の交換業者による講演でも同様のコメントがなされていた。
しかしながら、ビットコインの有限性についてのこのコメントにも議論のすり替えがないだろうか。 先のコインチェック盗難事件で盗まれた仮想通貨は、ビットコインではなく、NEMという仮想通貨だった。さらに最近韓国の交換業者で盗難が発生したのはリップルという仮想通貨だったという。ビットコインとNEM、リップルはどんな関係にあるのだろうか。
ビットコイン「有限」論は、ビットコインという「ひとつの仮想通貨」については正しい。しかしながら、仮想通貨がある数式の上で成り立つのであれば、ビットコインと同じ数式から算出される仮想通貨に「異なる名前」をつければ、「新たな仮想通貨」が出来上がるのである。その意味で仮想通貨は「無限に複製できる」ことになり、仮想通貨の有限性についてのトリックはここにある。
その場合、新たに作成された仮想通貨が広く流通するかどうか、という問題がある。仮想通貨の作成は無限に存在しても、誰も使わない、見向きもしない仮想通貨は価値がない。
ここで試しに、インターネットで仮想通貨の価格や時価を検索すれば、この実態がよく分かる。2018年7月1日時点の「トップ100仮想通貨」の価格・時価状況(例)は以下のようになっている。
仮想通貨名 価格(7/1) 7/1時価総額 4/6時価総額 時価変化率 (億円) (億円) ビットコイン 706,416 120,977 120,757 0.2% イーサリアム 50,471 50,682 39,227 22.6% ビットコインキャッシュ 82,162 14,143 11,367 19.6% ライトコイン 8,911 5,099 6,828 -33.9% EOS 897 8,040 5,082 36.8% ネオ(NEO) 3,373 2,193 3,183 -45.1% モネロ 14,587 2,360 2,900 -22.9% NEM 18.67 1,680 2,109 -25.5% Binance Coin 1,611 1,837 1,528 16.8% イーサイアムクラシック 1,774 1,838 1,434 22.0% Hshare 553 239 239 0.0% ちなみに、表の一番下のHshareは仮想通貨の時価総額ランキング(7/1)で48位であり、インターネットのランキング最下位、1537位(!?)の「NewInvestCoin」は、価格0.99円で、時価総額は不明とされている(!?)。
仮想通貨のこの実態を見て、どう考えるべきだろうか。少なくとも「仮想通貨有限論」は、実態自身が否定しているといえるだろう。 (画像はロンドンの地下鉄のホームで見つけた広告)
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